STORY

人材育成

育児もキャリアも諦めない働き方(前編)

2022.11.30

1972年に男女雇用機会均等法が施行されてから40年。出産や育児休暇などの制度は企業の必須事項となりました。しかしながら、制度の取得率が課題として残っているのが多くの企業の悩みではないでしょうか。まだまだ多いとはいえませんが、ソニーセミコンダクタソリューショングループ(以降、SSSグループ)では、女性の管理職が増えてきています。

今回、インタビューした3名は、いずれも出産を経験し、育児休暇から復職して、管理職として活躍しています。話を伺っていると、育児もキャリアも諦めない働き方を実践できる背景には、SSSグループが持つ独特の企業文化があることが分かりました。
これから就職活動に励む学生の方や、キャリアと育児の両立に悩む方、管理職をめざす方々に役立つヒントがつまった本インタビュー。前編・後編に分けてご紹介します。

喜多村 扶佐子

SSS デザイン&システム技術プラットフォーム部門

田畑 美幸

SCK デバイス技術部門

羅 敏(ルオ ミン)

SSS イメージングシステム事業部

同じ技術者としてリスペクトし合う
男女の差がなく、働きやすい環境

―― これまでのキャリアを教えてください。

喜多村

入社以来、半導体設計に必要なCADなどの設計環境を開発、提供する部署にいます。対象はSSSグループで設計しているほぼすべての部署の設計環境で、設計に使うツールやPDK※1、設計フロー、システムなどの環境を開発しています。キャリアとしては入社7年目で係長代理※2になり、その翌年に長男を出産し、育児休暇に入りました。10年目で係長になりましたが、翌々年に次男を出産し育休を取得。職場復帰後は、着実にキャリアを重ね、2019年に部門長に。そんな感じで、マネジメントとしてのキャリアがスタートしました。 ※1 Process Design Kitの略。集積回路の設計に使用される設計ツールの製造プロセスをモデル化するために半導体業界で使用されるファイルのセットのこと。
※2 現在はジョブグレード制度 となっています。

田畑

私はSCK 長崎TECに入社後、8年ほどプロセスインテグレーションを担当していました。その後2012年からCMOSイメージセンサーのマスク担当になり、2018年にはマスク担当としてSSSへ出向。2016年にSCKに帰任後、2か月後にマスクグループの係長に就任しました。2020年からはマスク※3業務とTEG設計・測定セットアップチーム※4を統合した課の統括課長を行っています。 ※3設計パターンをウェーハに転写するために必要なマスクの仕様を各製品・プロジェクトごとに決める業務
※4プロセス管理やウェーハの仕上りなどを簡易的に評価できるTEGの設計とそれらの測定をセットアップする業務

私は2005年から2007年まで別の電機メーカーに勤めており、2007年に中途入社しました。入社後に配属されたのがモバイル向けカメラモジュールの商品企画(ソニー株式会社)だったのですが、この部署がそのままSSSグループに転入となりました。2018年からは後のイメージングシステム 事業部となるインタストリー事業開発部に異動し、産機用センシングセンサーの事業開発を担当し、2020年からは統括課長に昇進。産機用センサー全般の市場開拓と顧客サポート業務を統括しています。業務内容は全世界に向けてSSSの新製品のプロモーションや新しいユースケースの探索活動、カメラ顧客が行っている開発への技術支援を行っています。

―― SSSグループの志望理由を教えてください。

喜多村

企業の志望理由としては、大学の女性の先輩がソニーで勤めていたのが大きな理由になります。その先輩から「ソニーは男女関係なくみんなフラットに働いている」という話を聞き、私もソニーで働きたいと思うようになりました。また、後にSSSとなる半導体の事業部を志望したのは、入社当初、私はより多くの製品に関わりたいと考えていたからです。「半導体領域はほとんどすべての製品に使用されている」、「半導体事業はこれから会社が力を入れていく領域だからやりがいがある」と勧められ、決断しました。実際に入社してみると先輩の言葉通り、まったく男女差は感じず、働きやすかったですね。

田畑

私は地元の九州が好きで、地元でものづくりに携わりたいと考えていました。そんな中、所属していた研究室の教授からの紹介で、SCKは九州から世界に技術を届けていることを知り、「こんなすごい会社があるんだ」と思い志望しました。入社してみると、連日、海外の方々たちとのテレビ会議があり、世界との距離の近さを実感しましたし、九州で世界中の人たちと仕事ができていることにやりがいを感じています。ある程度は想像していた通りでしたが、想像以上にすごい環境、体験の毎日で入社当初は毎日興奮していました。

私はSSSグループを志望したわけではなく、最初に勤めた企業が部署ごとSSSグループに合流することになりました。また、カメラのモジュールからカメラのコアであるイメージセンサーに携われるということで、「よりやりがいのある仕事ができる」と期待しての合流となりました。実際に合流してみると、豊富な社内マニュアルや成熟した社員教育システムに驚かされました。中途入社のメンバーにとって非常にやさしい企業であると感じましたし、合流して良かったと感じています。また、合流前は、SSSグループは大企業なので、みなさん賢くてクールなんだろうと思っていましたが、実際はみなさんやさしく、良い意味でギャップを感じました。

―― みなさん、育児もキャリアも両立されていますが、キャリアパスを重ねる上で苦労したことを教えてください。

喜多村

やはり子どもが小さい時期の仕事と育児の両立は苦労しますね。両親が近くにいなかったこともあり、どうやって仕事と育児を両立させるか、育児の分担や地域のサポートをうまく活用するなど、やり方を探っている間は本当に大変でした。特に子どもの体調不良など、どうにもコントロールできない中での仕事の進め方には頭を悩まされました。最近は介護の問題も気になりだしています。介護の開始時期や介護の状態が変化する時期には病院など優先しなければいけないものが出てくるので、苦労や心理的ストレスは育児と同じように感じます。

子どもの体調不良は、どうしようもないですよね。私もその部分でとても苦労しました。
我が家は共働きのため夫の仕事への理解があり、とても助かりましたが、育児と仕事の両立は思った通りにはなりませんでした。

田畑

私も同じですね。子どもの体調不良はコントロールできないので苦労しました。もう一つ挙げるならば、私自身の心の持ち方にもとても悩みました。私の周りには育児休暇の取得経験があるエンジニアがいなかったこともあり、とにかく迷惑をかけないように限られた時間の中で必死に業務をこなしていました。それでも定時外の会議をたびたび断ることがあり申し訳ない気持ちでいっぱいになり、とてもつらい時期がありました。「時間に制約があり、私はこの職場で何ができるのだろうか」と自分で自分を追い込んでしまっていました。

グループリーダーの一言に、育児中の自分の居場所が認められた気がしてほっとした

―― 3人とも育児でとても苦労されたようでしたが、それでも続けられたのはなぜでしょうか。

田畑

私の場合、当時のグループリーダーの一言で救われました。その当時、私はことあるごとに「すみません」と謝りながら仕事をしていたのですが、リーダーから「何も気にしなくていい。ちゃんと仕事もやっているんだし、指示してくれたらみんな動くよ」ってサラっていわれたのです。その瞬間、「私はここにいていいんだ」とホッとしましたし、とても嬉しかったのを覚えています。これ以降、過度に自分を追い込むことはなく、「自分なりの方法を見つけて仕事をしていこう」って前向きになれました。こういう雰囲気の職場でよかったなって心から思いました。あと、会社の制度にも助けられました。オフィス外勤務など新しい勤務制度が始まったときには、先にドキュメントを読んで 、上司に「こういう制度があるので、使いたいです」と説明して、活用させていただきました。

喜多村

SSSグループは良い意味で男女の差がないですね。「女性だから」という言葉は、私は聞いたことないです。男女ともに対等で仕事も平等。大学の研究室にとても感じが似ていて、同じ研究者・技術者として尊敬しあっていますし、自然と助け合う文化が昔からありますね。ですから、「こんなことで困っている」って声を上げれば、必ず周りは助けてくれるんです。さらに、働き方も使える制度もどんどん進化してきており、やる仕事も社内で自分に合った選択肢を選べる機会があることも良かったと思います。いまは管理職の立場ですので「こういう制度があるから人事に聞いてみると良い」とアドバイスしながら、部門メンバーがストレスのないキャリアパスを歩めるように気を遣っています。

制度が整っているのは当然ですが、SSSグループには制度を使いやすい雰囲気があると思います。「助け合うのはお互いさま」という考え方がしっかり根付いているので、何の抵抗もなく制度を利用できました。また、人事評価制度は本当に素晴らしいと思っています。年齢はもちろん、国籍、育児や介護などによる労働時間ではなく、一人ひとりの仕事ぶりや成果を見て評価しています。私は育休からの復帰後は、希望通りの仕事をさせていただきました。仕事はとてもハードでしたし、子どもが突如体調を崩すこともあり、思うように働く時間が取れないこともありましたが、できる限りやってきた仕事をしっかり評価していただけたことが、いまのキャリアにつながっていると感じています。あと、純粋に技術が好きな人が多く「この市場は何としても自分たちが立ち上げる」という情熱を持っている人たちと働けるのは、本当に刺激的ですし、多くのものを学べています。

喜多村

制度の使いやすさは意識の問題だと思うんです。女性は妊娠したタイミングから出産、育児に向けて準備を始めています。男性も妊娠が分かった時から準備すれば、育児休暇は取りやすいと思いますね。

いま、私のチームの男性が育児休暇を取っているのですが、直前まで「自分が抜けた穴をどうしよう」と心配していたようですが、そのための穴埋めができるのが組織です。実際、いまは問題なくそのプロジェクトは進んでいますし。

田畑

休む時、自分が休んでいる間、どのように穴埋めしてくれるのか説明があると安心できると思いますね。「組織がこのようにカバーするから大丈夫」と伝えてもらえるだけで、心の持ち方がだいぶ変わると思うんです。

関連リンク

  • 後編はこちら
  • 出産を経験し、育児休職から復帰して、管理職として活躍している女性管理職の3名へのインタビュー。後編では、それぞれの挫折経験や、マネジメントとしてどのようなチーム作りをしているか、日々の心がけ等について語っていただきました。