概要

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)のOLEDマイクロディスプレイは独自のフロントプレーン設計、バックプレーン設計によって、輝度ユニフォーミティや視野角などの特性低下を伴わない高精細化を実現しています。フロントプレーンにはOCCF(On Chip Color Filter)構造と新規カラーフィルター配列を導入、バックプレーンには独自の画素補正回路と新規駆動回路を導入しています。

技術解説

高精細化への課題と施策

画素ピッチを狭くし高精細化を進めると、トランジスタサイズの小型化によって特性ばらつきや耐圧の低下が起こり、輝度ユニフォーミティ低下などの影響が生じます。SSSでは独自の補正回路に加え、個々のトランジスタのレイアウトやプロセスを最適化することで、高精細でありながらも高い輝度ユニフォーミティ、高速応答性、広色域などを併せ持つ高画質を実現することに成功しました。また、新規駆動方法の導入により高精細化と高フレームレート表示も両立しています。さらに、カラーフィルターをシリコン基板上に直接形成して発光層との距離を縮めるとともに、カラーフィルターの色配置を工夫することで、高精細化に伴う視野角特性劣化を最小化する施策も導入しています。

高精細パネル

OLEDマイクロディスプレイの高精細パネルのイメージ画像

従来品

OLEDマイクロディスプレイの従来品のイメージ画像

OLEDマイクロディスプレイの画像比較
高精細パネル(0.5型UXGA)(左)と従来品(0.5型QVGA)(右)

狭画素ピッチ化と輝度均一性の両立

狭画素ピッチ化に伴う表示エリアの輝度ばらつきを抑えるため、バックプレーンに4つのPチャネルトランジスタ(T1,T2,T3, TD)と二つの容量(C1,C2)からなるSSS独自の輝度ばらつき補正画素回路を導入しました*1。また、本回路の4つの各トランジスタの機能に合わせて設計とプロセスをそれぞれ最適化することで、狭画素ピッチ(6.3um)にも関わらず、従来品7.8um画素ピッチと同等もしくはそれ以上の輝度均一性を実現しています。

*1) 0.5型UXGAタイプの場合。

高精細向けの輝度ばらつき補正画素回路の図

高精細向けの輝度ばらつき補正画素回路

自己補正が無い場合の表示イメージ

自己補正が無い場合の表示イメージ

自己補正が有る場合の表示イメージ

自己補正が有る場合の表示イメージ

解像感劣化を抑えた独自の高フレーム駆動

バックプレーンに新規設計駆動回路を導入することで、従来比2倍*2となる240fpsの高フレームレートに対応。通常の120fps駆動に加えて、2垂直ライン同時走査とそのラインの組み合わせをフレームごとにずらす処理を加えた特殊な240fps駆動を実現しました。単純な2垂直ライン同時走査には、同画像を2垂直ラインに表示するため垂直方向の解像度が半減してしまう欠点があります。しかし、SSSのOLEDマイクロディスプレイに搭載されている駆動方法は、フレームごとに同時に走査する2垂直ラインの組み合わせをずらし、時間方向に表示画像を補完することができるため、垂直方向の解像感の劣化を抑えた倍速駆動が可能となります。

このような高フレーム駆動は、カメラ用EVF(Electronic Viewfinder)のように、素早く動く被写体をファインダーでより正確にとらえることが求められる用途に好適。また、ヘッドマウントディスプレイ機器用としても、ARにおける現実世界に重畳する仮想映像のずれの改善、ひいてはVR酔いを軽減することにも役立ちます。

*2) SSSのOLEDマイクロディスプレイ『ECX337A』(0.5型QVGA(1280×960))との比較。

2ライン同時書き込みの図
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オンチップカラーフィルター構造と独自の色配列

一般的に狭画素ピッチ化を行うと、隣接するカラーフィルター間の干渉により色視野角の劣化が発生します。その要因の一つが、カラーフィルターとシリコン基板の発光画素の位置精度です。この位置精度を高めるため、SSSのOLEDマイクロディスプレイでは従来構造を変更してカラーフィルターをシリコン基板上に形成しています。これによりバックプレーンとカラーフィルターの貼り合わせ精度の影響をなくし、高い位置精度を実現しています。

オンチップカラーフィルター構造の比較断面図
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オンチップカラーフィルター構造の比較断面図

狭画素ピッチ化による色視野角劣化の二つ目の要因として、カラーフィルターの配列もあげられます。そこでSSSのOLEDマイクロディスプレイでは、カラーフィルターの配列を従来品の非対称な色配列から対称な色配列へ変更することで、隣接カラーフィルター間の混色影響を最小化しています。

オンチップカラーフィルター構造の比較上面図
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オンチップカラーフィルター構造の比較上面図

この2つのアプローチを導入した結果、右図のように斜め方向から見ても3刺激値が適度に重なり色付きが低減されていることが分かります。本技術により高精細化と広視野角化の両立も可能となりました。

従来構造と新構造の比較画像
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従来構造と新構造の比較画像

■参考文献
Takuma Fujii 他 SID 2018 Distinguished Paper
4032ppi High-Resolution OLED Microdisplay

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