INDUSTRIAL

モビリティ

駐車場で不安なく駐車できますか?
ドライバーの快適な運転を支える新たな挑戦

2023.12.06

今年から名称を変更し、自動車のみならず、あらゆるモビリティの可能性を示す展示会となったJapan Mobility Show 2023が2023年10月26日(木)~11月5日(日)(一般公開は10月28日(土)から)の期間で東京ビッグサイトにて開催されました。
ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)は、駐車を支援するオートパーキングソリューションというアプリケーションを出展。イメージセンサーを主力とするSSSは、モビリティ分野にどのようなインパクトを示せるのか。車載事業部の大久保がソフトウェア開発の背景や今後の展望について語ります。

大久保 淳

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
車載事業部

消費者の反応から商品開発の可能性を探る

(展示スペースには開場時間から長蛇の列ができており、「すごい!」という来場者の驚きの声が。 訪れたのはJapan Mobility Show 2023のSSSブース。自動駐車シミュレーターを体験した来場者はみな一様に驚きの表情を見せています。

── Japan Mobility Show 2023へ出展した目的を教えてください。

(大久保)
「SSSではイメージセンサーを製造・販売しており、モビリティ分野のお客さまにもご利用いただいております。普段は法人のお客さまと会話することが多いのですが、エンドユーザーとなる消費者の皆さまにもSSSがモビリティ分野にも取り組んでいることをご理解いただけたらと思い、出展することにしました」

車載事業部で今回のソフトウェア開発を手掛けた大久保。インタビューをしたのは一般公開から3日目でしたが、お客さまの反応には良い意味で驚かされていると言います。

(大久保)
「本当に連日、多くの方にシミュレーターを体験していただき、『早くこのアプリケーションが搭載された車に乗りたい』との声をいただいています。
「もちろん、ニーズがあると考えて開発したアプリケーションですが、今回の展示を通して老若男女を問わず、幅広い層にニーズがあることが改めてわかりました。こうしたリアルな声を励みに、多くのモビリティ関係の企業さまと話を進めていき、少しでも早くご利用いただけるものにしていかねばいう想いが強くなりました」

── 今回展示しているオートパーキングソリューションについて教えてください。

(大久保)
「私たちはSafety Cocoonというコンセプトのもと、モビリティに安心・安全と快適を届けることを目的に事業を進めています。安心・安全面では、イメージセンサーというハードウェアで、既に多くの自動車に搭載していただいております。今回は、もう1つの快適面を実現するソフトウェア部分をアピールしたいと考えています」

Safety CocoonはSSSが掲げる
モビリティ社会に対するコンセプト。

(大久保)
「今回、私たちが開発したのはセンシング技術を活用した駐車支援アプリケーション。自宅駐車場をはじめ、スーパーやショッピングセンター、そしてコインパーキングなど、あらゆる駐車場において駐車可能なスペースをいち早く認識し、自動運転で駐車する技術、オートパーキングソリューションです。

多くのドライバーが煩わしいと感じている駐車。少し先の未来では、この駐車がどう変わるのかを実際に体験いただけるシミュレーターを用意しました。最近は、駐車支援アプリケーションを搭載する市販車も増えてきましたが、他の自動運転支援アプリケーションに比べてまだまだ馴染みが薄いため、このシミュレーターで駐車支援アプリケーションの可能性に触れて欲しいと考えました」

駐車枠線が全て見えなくても自動駐車可能

── オートパーキングソリューションを開発することになったきっかけを教えてください

(大久保)
「従来の自動駐車アプリケーションは、ドライバーが空き駐車枠を見つけて、駐車枠の白線が全て見える場所、つまり、空き駐車枠の真横に一旦停車しなければならないという煩わしさがありました。つまり、自動駐車アプリケーションを使うために、わざわざ空き駐車枠の4辺を確認できる真横まで不自然に車を移動させる必要がありました」

人の眼に近い認識を実現できるイメージング技術において、一日の長があるSSS。この認識技術を生かすアプリケーションを開発したいと考えた結果、多くの人が困っている課題を解決でき、まだまだ普及していないサービスとして駐車支援に目を付けたと言います。

── この認識技術が高いことで、どのようなメリットがあるのでしょうか

(大久保)
「われわれの認識技術を使えば、ドライバーの視野とほぼ同じように、前方の白線が一部しか見えない空き駐車枠でも検出することができるため、ドライバーと同じ感覚で、快適にスピーディーに駐車してくれるアプリケーションを開発できると考えました。私たちの技術の強みは、前方の空き駐車枠を素早く検出できることです。このアプリケーションを搭載すれば、ドライバーは空いている駐車枠を見つけるところから、切り返しをして適切な位置に駐車するまでの一連の操作を全て任せられるようになります。」

変わらず駐車場での事故は多いため、安全で快適な駐車を実現できるオートパーキングソリューションは、いま最も求められる技術の1つと言えます。

── もとからあるイメージング・センシング技術を活用したということですが、開発はスムーズに進んだのでしょうか。

(大久保)
「開発では、2つの点で難しさを感じていました。
まず1つ目は、時間・天候・気候で異なる環境に対応することです。駐車場内の枠線や路面標識は道路標識のように統一されていません。例えば、枠線をとってみるとU字、I字、矩形等があり、色は白だけでなく橙色、線の状態によっては擦れ線もあります。止まれなどの標識も漢字、ひらがな、カタカナ、英語など統一されているわけではありません。
もう1点は、空き枠、時間、天候、気候など毎回異なる駐車状況にいかに対応できるようにするかに苦労しました。これらに対応できないと、ドライバーに日常的に使ってもらえるアプリケーションにはなりません。」

施設ごとに異なる駐車場の表記、そして天候や時間、そのときの駐車状況によって変わる環境下にあっても、常に正確に空きスペースを認識させることは非常に難しい作業となります。

── この駐車支援アプリケーションの強みや利便性はどのような点にありますか?

(大久保)
「私たちの駐車支援アプリケーションは、従来とは全く異なり、前方駐車枠の検出が可能です。しかし、このメリットはどうしても言葉だけでは伝わりにくく、どのようにすれば従来アプリケーションとの違いや利便性を伝えられるかに悩みました。
その一つの答えとして、実車で前方駐車枠検出するだけでなく、素早く駐車するまでの一連のデモを開発して、わかりやすく商品価値を伝えられる方法を確立させました」

実際にシミュレーターを体験してみると、想像以上のスムーズさ、そして素早さに驚かされました。いち早く空きスペースを見つけ出し、安全に、素早く希望のスペースに駐車できることを体験できました。

イメージング・センシング技術でリアルタイムに空きスペースを検知できます。しかも、以前来たことがある駐車場の情報を蓄積し、より安全・快適に駐車できるようになると言います。

また、駐車場の入口からお任せできる我われのアプリケーションは、ドライバーをドキドキやヒヤヒヤのストレスから解放してくれます。さらにはペダルの踏み間違いなどの誤操作もなくなるので、運転に自信がない人のみならず、すべての車両に搭載されるべきアプリケーションであると強く感じました。

提案型の商品開発で
未来の安全・快適を切り拓く

── オートパーキングソリューションは今後どのように広がっていくのでしょうか。

(大久保)
「前方駐車枠検出と駐車場全体を記録する独自のセンシング技術を活用して、すべてのドライバーが移動するときに付きまとう駐車ストレスから解放される次世代のアプリケーション開発を進めていきます。

もちろん、駐車に関わる全てをSSSの一社で解決する必要はないと思っています。例えば、駐車場のサービスプロバイダーとの連携を強めることで、駐車に関わる一連行為を快適にすることが、われわれが目指す安全・安心で快適なドライビングサポートに一歩近づけると思っています」

── SSSの今後のモビリティ分野での展望を教えてください。

(大久保)
「現在、イメージセンサーというハードウェアをモビリティ分野のお客さまに使っていただいております。それにソフトウェアによる付加価値を組み合わせることでお客さまの課題解決に貢献していきたいと考えています。さらには、モビリティ社会全体の課題解決にも寄与できるように、経済産業省のグリーンイノベーション基金を通じた活動も進めています。」

── 今後、モビリティ分野でSSSのプレゼンスを向上させていく上で必要なものや求めているものは何ですか

(大久保)
「私たちは自動運転支援の認識・判断・制御のうち、認識に関わるハードウェアとソフトウェアの両方を持っている稀有な企業であると自負しています。しかし、ソフトウェアは後発であるため、まだ市場プレゼンスが低いのが実情です。当然、待ちの姿勢では何も変わりませんので、提案型の商品開発を行い、実績を積み重ねていきたいと思っています。
今後は、ハードウェアとソフトウェア、両方の技術を応用することで、これまで解けなったモビリティにおける認識課題を解決できる技術を開発し、確かな品質でサービス提供することが重要だと考えています。
私たち車載事業部はまだ少数精鋭でやっています。こうしたチャレンジングな環境に臆さず、一緒に行動できる人材も求めています」

こう語る大久保自身も、実は異業種からの転職組。まだ組織が若いため一人ひとりの裁量も大きく、日々やりがいを感じていると言います。

(大久保)
「市場変化が激しく成長著しいモビリティ分野。これからの高度な自動運転・運転支援の実現に認識の技術は不可欠な存在です。ハードウェアとソフトウェア技術の融合をどのようにフィットさせていくか。その結果、どのようなソリューションを生み出せるか。これはイメージング・センシングのプロフェッショナルである私たちだからこそできる部分であり、社会に貢献できる意義のある仕事だと感じています」

イメージング・センシング技術のハードウェアとソフトウェアの組み合わせというユニークな強みを生かし、モビリティの新たな可能性へチャレンジを続けるSSS。次はどのような技術でモビリティ社会に貢献していくのか、今後の動きにも注目です。