農業の熟練度を補い、収穫拡大にさらには品種改良にまで広がる活用シーン
── ハイパースペクトルカメラの今後の可能性について教えてください
(玉城)
光合成やNPQ*1を測定するという話をしてきましたが、この二つがわかるようになると、もっと他のこともわかるようになるはずです。NPQは低いのに、光合成も進んでいないということになれば、病気や虫、もしくは樹木自体に問題があるのではないかと、焦点を絞ることができますし、そうすれば対処も迅速になります。焦点を絞った対処であれば、少ない人手でもできるので、人手不足の課題、そして若手・ベテランに関わらず、収量が確保できることによる経済的な課題に大きく貢献してくれると思っています。
こうした状況把握は、できるようでこれまでできなかったことなので、このハイパースペクトルカメラに大いに期待しているところです。
特にこのハイパースペクトルカメラは高解像度で撮影できる点がとても優れていると感じています。
下記合成画像Aのように一枚一枚の葉の形も分かるように撮影されていて、そこに色が付いた状態で確認できます。この色彩で、ストレス状況や光合成がどのように行われているかが判別できるのです。研究者は数値さえあれば評価できますが、普通の農家さんにとっては難しい。それが色彩で判断できるようになれば、誰もが扱える技術になると思っています。
また、品種改良という分野でもこのカメラは活躍してくれると思っています。
成長を速くする、大きな果実をつくるという点において、光合成は非常に重要な部分を担っているので、品種改良の結果、それがどのように成長しているのかをカメラで計測することで、技術的な支えになると思います。
ストレスに強い品種改良を進めるのであれば、実際に以前の品種と比較することが畑レベルで計測できるようになり、より正確な検証が可能になります。
*1) 集めた光エネルギーを、光合成に使わず、熱として捨てる仕組み(Non-photochemical quenching)
![](/files/62/feature/2023062102/content_photo03.png)
合成画像A
── 沖縄県農業研究センターは、今後SSSにどのようなことを期待しますか
(玉城)
大学との研究の場合、研究設計の通り進めればある程度の成果が見えてきます。製品開発においてもある程度の手法があって、それにのっとりつつ新しいアイディアを組み込むことで、試作品を作りあげてきました。
しかし、今回のSSSとの取り組みは、先端技術を駆使しているということもあり、やりながら新たな問題に直面します。想定外の課題と直面しながら一つひとつ解決していっています。こうした新しい課題や発見は今後必ず役に立つと思っているので、これからも一緒に頑張っていきたいと思っています。
![](/files/62/feature/2023062102/content_photo04.jpg)
── SSSは今後、スマート農業にどのように関わっていくのでしょうか
(小川)
営農現場での生産性を上げる話以外にも、SSSとしては地球環境に貢献していくという視点を持っています。たとえば肥料をやりすぎてしまえば、残った肥料は河川に流れ出て、河川の汚染につながっていました。限られた淡水資源を効率的に使えるようにするとともに、河川の環境も守る。そうしたことにも貢献できるようにしていきたいと思っています。
また、私個人としては、家庭菜園が趣味だったこともあり、とても楽しく研究しているので、しっかりとした成果を出して、SSSと沖縄県の農業に還元できるようにしたいと思っています。
(玉城)
私たちは熱意がない方とはいい仕事ができないと思っています。小川さんだから一緒にやっているという側面もありますので、ぜひ、このまま一緒に頑張っていただきたいです。
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